「熊野牛」。さてはて全くどこの地域の牛か、私にはわかりませんでした。「熊野三山」「熊野詣」「熊野本宮大社」。もしあなたが熊野牛というワードからこれらの言葉を連想できたなら、私は拍手を送ります。この熊野牛、ルーツがちょっと複雑なんです。
それでは、熊野牛がブランド牛になるまでの歴史を追いかけながら、その特徴と味。そしてどんな食べ方が美味しいのか、値段などを紹介していきます。
ブランド牛「熊野牛」の特徴と肉の等級 産地情報も
上記の写真は和歌山県田辺市にある熊野本宮大社で、熊野三山の1つです。
熊野三山とは、前述の『熊野本宮大社』とそれぞれ同県和歌山県新宮市にある『熊野速玉大社』と東牟婁郡にある『熊野那智大社』の3つのことを指します。
「熊野詣」は上記の神社にお参りすることなのですが、1090年に初めてこの熊野詣が行われ、それ以降恒例の行事として定着しました。この熊野詣をするために、京都の方から荷物を運ぶためにはるばる連れてこられていた牛が、後の熊野牛となります。宗教的な歴史と深く関わっているという点では珍しいブランド牛ですね。
それでは、ここからは本格的に熊野牛の紹介に入っていきます。ここまでのルーツも一つの特徴ではありますが、その他の特徴、味、美味しい食べ方とお値段を追っていきましょう。
熊野詣の際、荷物を運ぶために連れてこられていた熊野牛。その後は農耕牛として田畑を耕すなどの仕事をしていましたが、やがて肉用牛にされることになります。そのためにまず行われたのが品種改良でした。兵庫県の但馬牛というブランド牛は非常に資質が高く、素牛として全国に広められました。そして熊野牛も但馬牛の子牛の血統が取り入れられ、食用に品種改良が重ねられました。その結果生まれたのがブランド牛としての「熊野牛」です。
勿論、ブランド牛としての定義が熊野牛にもあります。
1番の定義が和歌山県の生産者によって、1年以上育てられていることです。そして2018年現在は熊野地方だけでなく、和歌山県の各所や、三重県でも飼育が行われています。
その他の定義として出荷できる月齢が24か月以上、つまり2年飼育されていないと出荷できないのです。また品種は勿論黒毛和種で、雌の場合は子供を作ったことのない牛に限ります。まずはこの4つの条件をクリアしなければ、ブランド牛としての熊野牛になることはできません。それでは、ブランド牛になるためのこれ以上に厳しい定義とはどんなものなのでしょうか。ご紹介しましょう。
上記の条件を満たした熊野牛の枝肉(その牛から取って食べられるお肉のことです)について、下記の定義を満たしていると熊野牛認定委員会がブランド牛の熊野牛だと認定してくれます。ちなみにこの委員会は熊野牛の認定の他、熊野牛の発展のために活動している団体です。
それでは肝心の定義ですが、
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歩留等級(枝肉についての評価)が AまたはBであること(Aが最高ランクです)
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肉質等級(文字通りお肉の質ですね)が3~5であること(5が最高ランクです)
この2つの条件をクリアすると、晴れて上記の熊野牛認定委員会がブランド牛「熊野牛」として認定してくれます。
歩留等級や肉質等級については、日本食肉格付協会という公益社団法人が定めているのですが、公式HPを見るとその基準がとても細かく書いてあり分かりやすいので、リンクを引用させていただきます。こちらのページを見ていただくと、ブランド牛についてかなり詳しくなると思いますよ。食肉格付というメニューに詳細があります。
また、何ともややこしいのですが、話題に出たばかりの日本格付協会による枝肉の格付がない場合ということもあるとのことです。
その場合は熊野牛認定委員会の人間が委託した調査員と呼ばれる人間2人がその肉質などを確認し、かつ委員会が適当と判断した場合に、前述と同様ブランド牛の「熊野牛」として認められます。
個人的な意見として、ブランド牛の定義としては極めて特殊に感じました。他のブランド牛より定義が狭く感じ、また地元の協会の認定の制度があることにも驚きました。
先ほど熊野牛は但馬牛の子牛の血統を引いて品種改良をしたというお話をしましたが、その甲斐あって、熊野牛の品質は超優良なのが特徴です。
お話が少しずれますが「子牛登記」という血統の証明書があります。
これは「全国和牛登録協会」という団体があり、その団体が和牛の登録、登記を行っています。繁殖牛、種雄牛として利用する場合に検定を行い、能力の高いものを登録することで和牛の品質向上を目指しています。色々な団体が出てきて分かりにくくなってしまいましたね。こちらも団体のHPを引用させていただくので、さらに詳細が気になる方は覗いてみてください。
お話を戻しましょう。熊野牛はお父さんである父も、お母さんである牛も、優秀な血を引いた牛で「仔牛登記」の証明書を持っています。それほどまでに血統を重視して作られているのですね。当然、優秀な血統の2頭から生まれた子牛も、品質の高いものになります。
最後にもう1つだけ特徴を。熊野牛は現在年間で出荷されている数が200頭以下と、かなり希少なブランド牛となっています。
血統書付きの熊野牛はほっぺが落ちるほどのお味
品質改良が重ねられ、また紀伊山脈の湧き水を使って育てられた熊野牛の味は格別です。また古い歴史のルーツがあることから、昔と近い飼育方法が採用されています。自然の多い和歌山の地で、植物性の飼料で健康的に育てられています。
そんな熊野牛の味の1番の魅力は、火を通した時の芳ばしい香りです。肉の繊維は細くきめ細やかなため柔らかく、口当たりも最高です。また霜降りも十分にのっていますが、その脂がとけるのは比較的低い温度であり、しつこくないサシの風味とともに肉のうまみを存分に味わえます。
これは美味しい食べ方が見えてきましたね…!
熊野牛の美味しい食べ方とレシピを探ろう
味の特長を聞く限り、焼いたら美味しいのは間違いないでしょう。
ということでシンプルに「焼肉」をオススメします!ステーキもよし、焼きしゃぶロースもよし、カルビもよし!香ばしい香りを堪能しながら、お肉の旨みを味わってみてください!
と、焼肉をおすすめしつつ…。
上の写真、何だか分かりますか?そう、ラーメンです。なんと熊野牛を使った贅沢なラーメンが存在するんです!
こちら私の知り合いの方からいただいた写真なのですが、上にのっている熊野牛のチャーシューがトロトロで、甘みもあり最高に美味しかったそうです!
このラーメンは『熊野牛らーめん 楽』というお店のラーメンだそうです。アクセスはJR紀勢本線の新宮駅から徒歩18分の場所。和歌山県に行ったらぜひ絶品チャーシューを味わって、お口をトロトロにさせてみてください!
熊野牛の気になるお値段をチェック
上記の『熊野牛らーめん 楽』の「熊野牛ちゃーしゅーめん」は、なんと破格の870円!手が届くお値段ですね!
焼肉の方でも値段の相場を見てみましょう。今度は焼肉店『焼肉ひげ』のメニューを参考に引用させていただきます。
こちらのお店もJR紀勢本線の新宮駅から徒歩12分の場所にあり、コスパ良く熊野牛を食べることができる人気店です。
ロースステーキ … 1700円
焼しゃぶロース … 1700円
上ロース … 1600円
上バラ … 1400円
上カルビ … 1400円
バラ … 850円
早速メニューを見てみましたが、高品質で超美味しいと噂のブランドにしてはお安めのお値段ですね。これはもう食べに行くしかないですよ!私も決心しました。和歌山県に行った際は、絶対に熊野牛を食べて帰りましょう!
熊野牛のまとめ
1 熊野牛は和歌山県育ちで、一定の定義を満たした希少なブランド牛。
2 肉の繊維が細いため柔らかく、焼いたときの香ばしい香りが一番の魅力。
3 オススメは断然「焼肉」。しかし変わり種の「熊本牛ラーメン」もオススメ。
4 希少性の割に値段は意外と高すぎない。手の届きそうなお値段である。
熊野牛は一応通販でも買うことができますが、せっかくなら牛たちの育った和歌山の地で焼肉やラーメンを嗜みたいですよね。私は熊野牛ラーメンに俄然惹かれたので、人生で1回は食べに行きたいと思います。皆さんもぜひ、貴重な熊野牛を味わってみてください。